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最早残骸
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 たまにはガンダムの話。
 もう一ヶ月以上前の話ですが、サークル内向け冊子に乗せる記事を書いていたときに自分で書いた内容について、もう少し掘り下げて考察。

 ちなみにその記事については、提出時期が締め切りからずいぶん遅かったので収録されていないかもしれません。今年の編集担当はうんともすんとも連絡くれないので現物見るまで分かりません。
 一応本文は以下に格納しておきます。最近の投稿量的にバランスが悪いので。


 さて、ではその内容ですが、大雑把に言えば一年戦争終戦間近のジオン兵の心境。果たして彼らはどういう思いでいたのか、所謂深読みなのですが、「足なんて飾りです」というジオン兵の台詞に「もはや地球には降りられぬ」と言う諦観のようなものを感じた、みたいな話です。既に手垢の付いた、恐らく当たり前の議論でしょうが、せっかく自分の中である程度まとまった意見があるので、それについて書いてみたいと思います。


 ガンダムの面白さを語る際に、以下のような表現を見かけることがあります。
「ガンダムの面白いところは連邦が正義ではないところことだ」
 主人公が所属する組織が正義ではないという点は、他の多くのロボットアニメ(というよりは勧善懲悪を是とする児童向けの作品)を否定しています。しかし、上の表現は必ずしも適切ではなく、正しくは(丁寧に書くならば)以下のようになるでしょう。
「ガンダムの面白いところは連邦も正義ではないところだ」
 先の表現では、敵方のジオン軍にこそ正義があるようにも採れます。当然多くの方がご存じの通り、ガンダムの世界に於いて戦争を行う組織にはどこにも正義などなく、それが戦いを奨励し敵を倒すことを賞賛する単純な勧善懲悪的作品とは一線を画す物語性を与えています。

 連邦の「悪」としては、本編中では主に、「必ずしもWB隊に協力的でなく、子供に戦争をさせる連邦軍」として描かれています。また、ジオン公国の開戦理由は、地球から最も離れたサイド3という過酷な環境で、地球に搾取され続けることに対する反発が抑えきれなくなった、と言うのが簡潔でしょうか(ザビ家だジオニズムだと言うのは切っ掛けでしかないでしょう)。

 これを「ジオンは生きるために必死で戦ったのだ、ジオンの決死の戦いを連邦は物量で押さえ込んだ」と言うような視点で捉えることもできます。その体言者として、後に0083で描かれるエギーユ・デラーズやアナベル・ガトー等というキャラがあるのでしょうが、しかし彼らもその理想の実現のためにあろう事か地球に対するコロニー落としを実行します。

 ということで、次はジオンの「悪」、というよりは暴挙について考えてみます。ガンダムのナレーションでは、一年戦争の2/3が終わった時点で「人類の半分が死んだ」と恐ろしいことが語られます。言うまでもなく、その切っ掛けを作ったのはジオンによる宣戦布告です。しかも「ジオン公国」は基本的にはサイド3にあるコロニーだけなので、圧倒的に連邦側の人間の方が多く死んでいるはずです。死傷者の中には居住地での戦闘による被害者もいるのでしょうが、その大規模な人口減少の主因は,明らかに南極条約締結前に起きたジオンによるコロニー潰しと地球に対するコロニー落としでしょう。前者ではサイド1,2,4,5に対して攻撃が敢行され、いくつかのコロニーにはNBC兵器が使用され住民ほぼ全滅というとんでもない被害をもたらしました。さらにそのようなコロニーのうち一基を地球に降下させ、シドニーを吹き飛ばし、莫大な損害を与えました。さらにそれによる気候変動もあり、結果人類の半分が死滅するほどの惨事となりました。

 さて、これだけ見てもジオンの暴虐っぷりが目に付きます。それも元はと言えば、オデッサ以前のガルマ国葬時点ですら国力に30倍もの開きがあるとされた連邦に勝つための、小国ジオンの取り得る苦肉の一手だったのかもしれません。また、戦後に小国から世界を支配することを考えた、合理的に計画された人口調整策であったのかもしれません。しかし、やはりそれは戦争の範疇で許される行為ではありません。作品によっては、これらの設定を取り上げ、連邦の士気を保たせた要因として描かれることもあります。しかし一方で、ジオンにこそ大義ありというような作風のものも見かけます(やり方をこれほど間違えてしまうと、大義も何も無いと思うのですが)。

 ともかく、ここで冒頭の内容に戻ります。ア・バオア・クーで事実上の最終決戦が行われようとした時点で、既にジオンは地球を放棄し、宇宙へと次々に脱出をしていました。それどころか、莫大な国力の元で再建された連邦軍宇宙艦隊と新型のMS群が、宇宙でもジオンの優位を奪いつつありました。ソロモンが陥落し、貧弱な祖国であるサイド3の前でグラナダとア・バオア・クーの二拠点が事実上最後の砦となった時点で、もはやジオン軍には少しでも良い条件での降伏しか選択肢は無かったと思われます。その芽の中でも最良の一つを父ごと摘んだと思われるギレンの行動にはもはやヤケクソしか感じられませんが、恐らく彼は最後まで勝利を確信していたのでしょう。
 一方で、恐らく前線の兵たちの思いは絶望一色だったに違いありません。地球からの圧政から解放されると信じて開戦に賛同し、非情な作戦も絶対の勝利によって肯定されると信じていたにも関わらず、気がつけば自分たちの故郷のすぐ目前まで敵の、それもたった一年前に壊滅させたばかりのはずの大艦隊が迫っています。しかも物量は消耗する一方の自国を遙かに凌ぎ、以前はジオンだけの新兵器であったはずのモビルスーツが大量に配備されています。無事生きて終戦を迎えられたとして、兵士たちはどうなるでしょうか。軍属はもしかしたら全員が大虐殺の責任をとって処刑されるかもしれない、ぐらいのことは考えたでしょう。あるいは、本国が仇討として破壊されるかもしれません。少なくとも、ジオンが負けた世界でジオン軍人が無事に地球(や他のコロニー)を訪れることはできないに違いない、そう考えた者も居たはずです。
 彼らに残るのは宇宙だけです。過酷な、無重力の宇宙で生きていかないといけません。そんな彼らにとって、もはや大地を踏みしめるべき「足なんて飾り」であったのではないか、と、そんなことを考えたのではないかと,そういうお話でした。

 自分でも深読みがすぎると思うのですが、しかしやはり一年戦争それ自体に於いて、ジオンが何をやったのかということを見つめ直すのは他のUCを舞台にしたガンダム作品を見る上でも重要なのではないかと思います。富野監督以外の作品も(特に一年戦争付近には)多いのですが、その上でもこのような前提知識を持って見ると作品の深みが増すような気がします。



 長くなりましたが、こんなことは夏休みでもないと書こうと思わないのでせっかくなので。
 特に文献調べながら書いたわけでもないので、もしかしたら盛大に間違ったことを書いている部分があるかもしれません。何かありましたらご指摘をお願いいたします。
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